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企業分析

【5大商社比較】総合商社なら伊藤忠がダントツ

2017-11-23

【2021年3月期版】投資対象としてはダントツで伊藤忠商事が魅力的です。最高益を更新し続けていて、名実とも元業界トップ三菱商事を追い抜きました。

そんな伊藤忠商事を含め、日本株では高配当株として知られる商社株。総合商社について、株価、キャッシュフロー、財務状況から投資対象としての比較をしてみます。伊藤忠ならではの強みを見ていきましょう。投資家だけでなく就活性や転職活動中の方にも参考になれば幸いです。

1. 総合商社株の4つの魅力

総合商社は事業投資を生業とし、少数精鋭でエリートが揃うイメージのある総合商社。しかしざっくりとしすぎてイメージできない人も多いのではないでしょうか。

一般的な「総合商社」の魅力は5つあります。

  • 高配当
  • 従業員が優秀
  • ビジネスモデルが優秀
  • 割安で放置されがち(高配当の裏返しですが)
  • 高給(番外)

高い給料は就職しないともらえませんし、そもそも相当優秀でないと選考の土俵にすら上がれません。僕は従業員としてのメリット教授を諦め、株主としてこうした魅力を株式投資対象としてとらえています。

コングロマリット業態ゆえの分析の困難さ、大型投資案件が多く減損リスク等を想定して割安に放置されがちな商社株。実際に米バークシャー社会長であるバフェット氏は2020年9月に、1年以上かけて5大総合商社株を発行済み株式の5%まで購入していたこともわかっています。あのバフェット氏が購入するということはそれなりに投資妙味があるのでしょう。

なお筆者は素材産業で3社の転職を得てっキャリアアップした素材産業の開発エンジニアです。素材業界としては高給を頂いている部類ですが、総合商社の年収を見ると流石に羨ましくなるものです。ほどほどの働き方で休みを重視する方は、多少収入を落としても製造業でのキャリアを検討してみてもいいかもしれません。

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2. 5大商社とは

総合商社の中で売上高トップ5である、伊藤忠商事(8001) 、三菱商事、三井物産(8031)、住友商事、丸紅の5社を指します。豊田通商、双日を加えて7大商社と言われることもありますね。

総合商社という名前の通り、様々な分野で事業を行っているコングロマリットです。「カップラーメンからロケットまで」とも言われます。

本記事ではIRの長期推移に焦点を当てて解説します。具体的な事業内容は複雑で非常に分かりにくいので、就活性や転職検討者などは骨のある業界研究本で徹底分析されることをお勧めします。

3. 5大商社の各種指標の長期推移比較

5大商社(伊藤忠商事、三菱商事、三井物産、住友商事、丸紅)を様々な指標で比較してみました。過去推移がしっかり比較できるよう15年分のデータ推移を徹底調査し比較しました。

ちなみに僕が転職するときには、株価以外の部分は財務体質を含めてしっかりチェックしていました。新卒でここまで比較するのはちょっと厳しい気もしますが、中途採用で応募するなら応募先の企業がどんなものかはしっかり分析しておきたいところです。

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3-1. 比較①:株価 ~日経平均超は伊藤忠だけ~

5大商社(三菱商事、伊藤忠商事、三井物産、住友商事、丸紅)の株価を比べてみます。リーマンショック後の底値である2009年2月を100としたときの指数で表しました。リーマンショック以降はコロナショックまで大きな調整局面を迎えていないこともあり、あえて10年以上の期間で変化を確認します。グラフは2005年6月~2020年5月の推移です。

5大商社(伊藤忠、三菱商事、三井物産、住友商事、丸紅)の2005年4月から2021年4月までの株価推移と比較

ベンチマークとして日経225平均も入れてあります。伊藤忠は日経平均を唯一アウトパフォームしています。特に2016年以降のアウトパフォームは顕著です。唯一リーマンショック前の高値を更新し続けてきました。市況によらない収益力を着実に積み重ねてきたことが読み取れます。

2020年2月~3月のコロナショックでも少々下落していますが、純利益は5000億円をキープし首位三菱商事の背中が目の前に見えています。「下落率」では多少者と比較しても穏やかな値動きとなっています。この比較では丸紅がやや好評価に見えていましたが、足元のコロナショックで脆弱性が露呈してしまいました。リーマンショック底値を基準とした比較のため、財務基盤の軟弱な非財閥商社が過大評価されやすい比較評価方法であった可能性が高いです。

業界トップを走る三菱商事はLNGプラントの千代田化工絡みの巨額債務リスクが発覚。2019年5月に株価が急落しています。三井物産は相変わらず資源比率が高く、投資が嵩むことから敬遠されていそうです。

関連するプラントエンジ業界についても、長期IR推移を比較してみました。総合商社よりもハイリスクで、総合商社が手を焼いているのも頷けます。

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これだけ明暗がはっきり分かれていますが、勝ち組企業が存在する総合商社は魅力的な業種と言えそうです。総合重機は全体として勝ち組企業がなくも難しい業種です。天下の三菱重工、航空機の雄IHIですら苦しい展開が続きそうです。

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3-2. 比較②:ネットDERと自己資本比率

重要な財務指標の1つ、ネットDER(Debt Equity Ratio)を確認します。「負債資本倍率」とも表されます。財務状況の健全性を見る指標の一つで、負債(Debt、返済義務あり)と株主資本(Equity、返済義務なし)の比率が表現されています。厳密には異なりますが、自己資本比率と似た指標で、特に自己資本比率が低い領域について敏感に反応する指標と考えると分かりやすいかもしれません。

ネットDERの値が低い(≒自己資本比率が高い)ほど財務が健全であることを示します。逆に高い(≒自己資本比率が低い)場合にはたくさん借金をしてレバレッジの高いチャレンジングな経営をしていると言えます。

リーマンショック以前は各社高い水準で推移し、リーマンショックの2009年度は各社とも大幅に上昇しています。丸紅はリーマンショックでの株価下落幅が大きくなっています。その結果軟弱な財務基盤がさらに毀損(ネットDERの上昇)し、それだけ投資家がリスク回避に動いたということがわかります。

近年は各社とも右肩下がり傾向で債務返済が進んできましたが、2020年3月期では程度の差こそあれ悪化傾向となっています。その中で伊藤忠は唯一ネットDERを減らしてきて、財務健全化をさらに進めました。逆にリスクを取ってナンボの総合商社ですが、コロナ騒動の中でも財務を悪化させないのは流石です。

3-3. 比較③:財務キャッシュフロー

財務CFは会社からの資本の出入りを示す指標です。事業が軌道に乗って財務良好となり、債務返済や株主還元などが進んでいる場合は資金流出超でマイナスになります。逆に資金繰りが悪化している場合には、借入や増資などで資金調達を行いプラスとなる指標です。

総合商社業界はリーマンショックを含む2000年代の苦しい冬の時代を乗り越え、右肩下がり傾向。全体としてアベノミクス以降は債務返済や配当・自社株買を含む株主還元が進んでいる様子と言えます。

2005年から2020年までの5大商社(伊藤忠、三菱商事、三井物産、住友商事、丸紅)財務キャッシュフロー推移と比較
各社有価証券報告書より素材さん作成

業界4位に転落した住友商事、5位の丸紅は2020年度は財務CFが悪化していて、2020年度以降の資金繰りが大変そうです。投資対象としては対リターンで考えてもリスクに見合わない可能性が高いでしょう。

3-4. 比較④:純利益の推移

次に純利益の推移を比較します。純利益も伊藤忠が2018年度から3年連続トップの座を守っています。また伊藤忠は他の4社と比較して、減損などによる変動が少なく赤字転落も過去15年間で一度もありません。資源比率が低い為か、ここでも安定感が見て取れます。

また規模こそ業界5位の丸紅ですが、利益成長率という観点では健闘している様子も注目すべき点です。2019年度に米Gavilon穀物事業大幅減損しましたが、一過性の減損で済ませて万年5位の座からの脱出が見えてくるのでしょうか。

3-5. 比較⑤:連結従業員数の推移

ここまで絶好調の伊藤忠を見てきましたが、従業員数を見てみましょう。伊藤忠は中国CITICを始めとした事業投資に伴い、連結人員を急拡大させてきました。連結従業員数は過去15年間で3倍になっており、他の4社と比較すると勢いの違いを感じさせられます。

一方で伊藤忠は従来事業よりも高利益を生むビジネスを見出してトップの座に就いたわけではありません。これまでの利益水準と同程度の魅力をもつ事業を増やして、積み上げで伸ばしてきた可能性があります。従業員1人あたりの利益水準が気になりますね。

3-6. 比較⑥:連結従業員数1人当たり純利益の推移

ここまで伊藤忠の勢いを見てきましたが、連結従業員数1人当たりでみるとどうでしょうか。伊藤忠は1人あたり純利益は400万円程度と三井物産や三菱商事と比べると控えめです。三菱商事や三井物産は、リーマンショック前ほどではないですが、それでも長期平均的では今も高利益体質であることが読み取れます。

「組織の三菱」と言われるようにスマートな仕組みづくりで確実に稼いだり、「人の三井」と言われるようにマンパワーでゴリゴリ美味しいところを開拓して利益を稼いでいたのでしょうか。2トップ財閥は資源ビジネスの旨味をしっかり享受してきました。

2005年度から2020年度までの5大商社(伊藤忠、三菱商事、三井物産、住友商事、丸紅)について、従業員1人あたり純利益推移の比較を示した図

資源ビジネスのようにビッグなビジネスで大きくがっぽり稼ぐというよりは、非資源でコツコツ積み上げるという様子でしょうか。1人あたり利益がもっと伸びてくれば伊藤忠の魅力度はさらに増しそうですが、現実的に資源以外で伸ばすのも難しいでしょう。しかし伊藤忠の従業員1人あたり利益体質を落とさずに、規模を拡大してきたのも日系企業では稀有な存在であることも確かですね。

3-7. 比較⑦:従業員の平均年収推移

さて、最後は優秀なビジネスパーソンを引き付ける報酬部分、平均年収の比較です。この平均年収は有価証券報告書から抜粋したものです。グラフ化はしてみましたが、基準自体は非常に曖昧で何とでも操作できます。「平均年収は○○万円、さすがは高給ですね」なんて適当なコメント載せてる年収サイトとかありますが、対顧客ビジネスがやりにくくならないようにしたり、逆に転職者へ実体以上に魅力的に見せている企業も多々あります。詳細は就職四季報で確認しましょう。

2005年度から2020年度までの5大商社(伊藤忠、三菱商事、三井物産、住友商事、丸紅)の従業員平均年収推移の比較
各社有価証券報告書より素材さん作成

一方で各社単独での時系列の比較としては有用です。業績悪化のときにどれほどのインパクトを受けるかは時系列データで読み取れるからです。大事なことなので繰り返しますが、有価証券報告書の企業間年収比較は重要でなく、各企業の時系列変化比較をする上では有用です。

景気の波に関わらず従業員に「優しい」のか、業績の波を従業員としっかり共有するのかがよいのかは分かりませんが、リーマンショックの時には各社それほど大きな年収ダウンはしていないようです。投資家にとってプラスかマイナスかはよくわかりませんが、判断材料の一つとしてみると有事の時に何か見えてくるかもしれません。2019年度決算で石油・ガス、穀物、銅、インフラと減損祭りだった丸紅が一人負けの様相。ただ近年の水準が好調だったこともあり、2000億近い赤字決算でも5年前の水準に戻っただけという見方もできますね。2020年度に赤字決算だった住友商事、大幅減益だった三菱商事は賞与カットで減りそうですが、それでも総合商社だけあって他業界では見られない高水準支給は続きそうですね。

4. 5大商社の財務比較

各社の財務状況と事業内訳を確認してきます。財務状況はキャッシュフロー(営業CF、投資CF)と営業利益率の15年推移を示しました。総合商社は製造業とは全く異なるビジネスモデル。資源権益や事業投資は一朝一夕に結果は出ないため、IR情報は長期的に確認する必要があるためです。基本的チェックポイントはキャッシュフローと1株配当(EPS)、1株利益です。

 各社のキャッシュフロー(CF)はお金の流れの実態を示す指標。「利益」は色々と説明して誤魔化すこともできますが、お金の流れは誤魔化せません。は営業CFは本業での事業収支差を表し、事業そのものが黒字ならプラス、赤字ならマイナスになります。伊藤忠は営業CFが唯一右肩上がりとなっています。投資CFは固定資産や株、債券などの売買損益を示します。設備投資や事業投資を行った場合はマイナス、資産売却をした場合はプラスになります。営業CFと投資CFの合算したものがフリーCFと呼ばれ、会社が自由に使えるキャッシュです。これが配当や自社株買い、債務返済、内部留保の原資になります。

 一株益(EPS)と一株配当です。各社で発行済み株式数が異なるので、配当目的の投資では一株あたりの利益に注目する必要があります。また配当性向は一株利益と一株配当の比率を表す指標で、大きいほど株主還元に積極的であると言えます。一般に成熟産業の優良企業(株主にとって、です)は配当性向が高くなる、すなわち稼いだキャッシュ(利益)を株主に還元する傾向にあります。日本株が最も苦手な分野です。総合商社は日本株では高配当ですが、積極投資を行うので配当性向は20~30%とそれほど高くはありません。

4-1. 伊藤忠商事

5大総合商社の中で急成長は「非財閥の雄」。配当性向は少しずつ切りあがっていますが、十分な配当余力を残したまま増配を続けてきています。先行き不透明な2021年3月期も88円と増配を掲げ、商社の代表選手の名にふさわしいですね。事業が軌道に乗り株主還元にも積極的なことがわかります。三菱商事、伊藤忠は大きく投資して投資回収するサイクルがしっかり回っていているように見えます。

キャッシュフローを確認します。2016年は中国CITICへの大型投資の影響でCFは大幅赤字ですが、概ね営業CFは安定してきています。財務CFもマイナスとなっていて、自社株買いや債務返済が進んでいることが読み取れます。

伊藤忠も配当性向こそ高くはありませんが、市況が悪い中でも着実に利益を創出し続けています。配当性向も長期推移は微増傾向ですが、無理して配当を捻出しているわけでもなさそうです。資源に依存しない経営の強みが数字として表れており、着実なリターンを見込める投資対象として非常に魅力的に映ります。本記事を投稿した2017年時点では営業CFの伸びと比較して1株益急増が気になっていましたが、2019-2020年と営業CFが追い付いてきたので問題ないでしょう。

懸念点は利益の伸びに対して営業CFの伸びが追いついていないことでしたが、2019年度以降上昇傾向になってきました。2019年度は一過性CFもあり実質営業CFは6000億円程度ですが、収益性は一段上がりました。2020年度も鉄鉱石価格上昇の恩恵を受けたと言われますが、純利益4000億円うち鉄鉱石を含む金属事業は25%。主戦場は変わらず非資源なのも底堅い一つですね。既得権益で美味しい思いを出来ない非財閥ならではの弱みが強みに変わり、足場が固まってきたと言えそうです。

僕らアラサー世代の就活時代であるは、3大財閥商社の住友商事(8053)を抜いて最高益を更新したと世間を賑わせていましたが、ぐんぐん順位を上げて名実とも1位の座の定着を狙うポジションまできました。ただし伊藤忠は中国投資比率が高く、今後も米中貿易摩擦の打撃を受けるリスクがある点には要注意です。

4-2. 三菱商事

三菱商事は2016年度に原油関連で大幅減配した後は順調に伸ばしています。またコロナ騒動で先行きが見通せない中でも自社株買いを推進していて、株主還元に積極的です。

また、1年かけて着々と3000億円自社株買で還元しました。コロナ騒動の2~4月にも淡々と200億~300億円ずつ進めているのはさすが組織の三菱ですね。純利益もなんとか2019年度業界1位を保ちましたが、伊藤忠に肉薄され2021年度は逆転されるかもしれません。投資対象としては魅力的ですが、伊藤忠の輝きには一歩見劣りしてしまいます。

数年前までは商社らしく大きく投資しながらもキャッシュを着実に生み出すビジネスモデルが確立されているように見えました元業界トップ。しかし近年の投資圧縮の流れを受け、雲行きが怪しくなってきていますね。今後の動向に注目したいところです。

4-3. 三井物産

三菱商事と同様、化石燃料を始めとした資源が強み。2016年度に原油関連で減配した後は順調に伸ばしているのも、三菱商事と非常に似ていますね。またコロナ騒動で先行きが見通せない中でも自社株買いを推進していて、株主還元に積極的です。

2019年10月の500億円自社株買いに続き、2020年3月にも自社株買いを決議し実行しています。株価急落のタイミングで手早く決議して実行まで移すスピード感は、歴代でも異例の昇進を遂げた安永社長の手腕を市場にアピールしました。まだまだ資源頼みではありながら、期待が持てそうです。ちなみに僕は200株保有しています。4

4-4. 住友商事

住友商事は2015年度に銅関連で大きく減損を出して赤字転落も減配を避けて乗り切りました。2019年度は得意の鋼管事業が市況悪化直撃で赤字転落し、全体ででもEPSが半減してしまいました。2019年度は何とか増配を保ってます。しかしリーマンショック時の減配実績から予想された通り、2020年度決算でも減配となってしまいました。

2020年度決算ではデジタルメディアのみ黒字で、それ以外の5セグメント(金属、輸送期・建機、インフラ、生活・不動産、資源・化学品)は全て赤字と惨憺たる状況です。マダガスカルのニッケル事業850億円を始めとして3500億円もの減損を計上。営業CF自体は増加傾向なので、追加のキャッシュアウトはなさそうですが、過去投資分を毀損した痛手の実績がまた一つ積み上がってしまいました。

減損で過去投資分も毀損している上、近年の投資CFが他社よりも圧倒的に少なく見えます。「石橋をたたいても渡らない」ほど慎重な企業文化の現れですが、将来の成長余地を着実に削っています。伊藤忠に抜かれて万年4位のポジションどころか、5位の丸紅と4位ポジションを争う展開になりそうです。

4-5. 丸紅

業界万年5位の丸紅。規模が小さいながらも、資源関連での減損による業績への大きな影響がありました。足元コロナ問題で5大商社で唯一2020年度の減配を決めましたが、一過性の減益で膿を出し切り復活の様相を見せています。

丸紅は業界5位ということもあり、営業CFに対して2014-16年に大胆にしています。また2017年度は投資CFがプラスになっていて、2017-19年は投資CFが急減していることから、過去の過剰投資分を整理して株主還元の原資をひねり出しているようにも映っていました。

ただし、直近5年は大幅に投資圧縮しており、将来の成長余力を削っているようにも見えます。規模で他の4社よりも劣るゆえに逆張りに出る必要があるだけに、今後の伸びはやや疑問というのが率直な感想ですね。

5. 【結論】総合商社投資なら伊藤忠一択

総合商社株の投資対象として伊藤忠は優れていることがわかりました。数少ない日本株のポートフォリオに組み込んでもよさそうな銘柄と言ってよいでしょう。総合商社の本業は事業投資なので、ある意味グローバル投資信託を買うような気持ちで投資していくのが良いのではないでしょうか。

総合商社ほどではないかもしれませんが、銅価の影響を受けやすい電線業界。この業界はトップの住友電工が独走状態です。

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素材さん

東大卒を活かせてない経歴の社畜。工場勤務のヒントを綴ります。転職、結婚、資産形成、資格取得、仕事感。共通点ある方のヒントになれば幸いです。 転職1回目で僻地突入、転職2回目で僻地脱出。/30代前半/東大卒(学部・院)→中小→大手JTC→超大手JTC/素材開発エンジニア/既婚/3人兄弟の真ん中

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